押し引きのコントロール
押し球、引き球の撞点や挙動、ラインについて覚えたら、押し引きの回転量や力加減と手球の走る距離を関連付ける練習をしてみましょう。
ここでは、押し引きの球の移動距離をコントロールする練習について見ていきます。
<注意>
以下のコンテンツは台のコンディションに高く依存します。
そのため、手球の走り方の距離感などが登場する場合には、あくまで参考の一つとしてお考え下さい。
ホームの特定の台など、なじみがあり、かつラシャの張替え状況などが把握しやすい台をご自身のコンディションの基準として持っておくことをお勧めします。
押し引きの基準作り
まずは、ほぼ全厚の配置を用いて、フリがないときの押し引きの距離をコントロールする練習をします。
下の図のように手球と的球を配置します。
手球と的球はサイドポケットからそれぞれ1ポイントの場所で、長クッションからわずかに離しておきます。

最初の練習は自分のイメージの良い球でのコントロールです。
撞点や力加減を事前に限定せずに、自分が感覚的にこれだと思った撞点と力加減を自分で定めてコントロールしていきます。
まずは、ストップショットです。
的球にヒットした手球が静止するようにシュートしてください。
このとき、撞点はやや下でも真ん中でもどちらでも良いですし、それに応じた適切な力加減ならどんな加減でも良いです。とにかく手球をストップさせます。
そして、自分が一番しっくりくるショットを探します。そのときの撞点や力加減などのショットイメージをしっかり記憶しましょう。
その上で、そのしっくりきたショットを練習します。まったく同じ撞点、力加減、手球の挙動、的球の速さを再現できるようにします。
5回程度連続で成功出来たら、一旦OKです。
次は、1ポイントの押し球です。
手球が的球にヒットしてから1ポイント進んで静止するようにシュートしてください。
このときもストップショットのときと同じく、どのくらい上を撞くか、どのくらいの力加減で撞くかは限定しません。とにかく1ポイント押して静止するようにします。
そして同じように、自分が一番しっくりくるショットを探します。このしっくりきたショットの撞点や力加減などのショットイメージをしっかり記憶しましょう。
これも、そのしっくりきたショットを練習します。まったく同じ撞点、力加減、手球の挙動、的球の速さを再現できるようにします。
5回程度連続で成功出来たら、一旦OKです。
同様に2ポイントの押し球、スクラッチギリギリ(3ポイント)の押し球、もしっくりくるショットを探し、再現できるようにします。
また、同様に引き球でも1ポイント、2ポイント、 3ポイントきっちり移動させられるような、しっくりくるショットを探し、再現できるようにします。
これらができるようになったら、「全厚で手球-的球が2ポイントのときの1、2、3ポイントの押し球と引き球」は自分の中に基準ができたことになります。

次は、手球と的球の距離を1ポイントに近づけて、同じように1~3ポイントの押し引きのしっくりショットを探します。
同様にして、手球と的球の距離を3ポイントに離した配置でも1~3ポイントの押し引きのしっくりショットを探します。
以上がすべてある程度再現できるようになれば、
親しんだコンディションなら、手球-的球の距離が1~3ポイントのとき、1~3ポイントの押し引きの球は自分の中に再現できる基準がある
という状態になっているはずです。
これは非常に強力な武器で、親しんだコンディションならこれでいいはずだという自信があると、コンディションの異なる環境や緊張してプレッシャーのかかるシーンなどでも、基準がぶれて迷子になってしまうというケースが劇的に減少します。
力加減のコントロール
「手球-的球の距離が1~3ポイントのとき、1~3ポイントの押し引きの球は自分の中に基準がある」という状態になったら、今度は同じ撞点のときに力加減を変えてみたらどうなるのかを見ていきます。
これにより、自分の基準から力加減を変更したときにどのような手球の挙動になるのかを知ることができるので、そこから逆算して力加減をコントロールする練習になります。
引き球なんかだと、どのくらい弱く撞くと引きの回転がほどけて押し球に変わってしまうのかなどもわかります。
例として、手球と的球の距離が2ポイントのときに1ポイント押すような押し球でのケースを考えてみます。
このときの撞点はそのままで、2ポイント押すことのできるような力加減を探します(多くの場合では強くなると思います)。
同様にして力加減だけで0.5ポイントに抑えてみたり、2.5ポイント、3ポイント押せるか試してみたりします。再現性はあまり重要ではないので大体で良いです。ただし、撞点は1ポイント押しの基準と出来るだけ正確に同じ撞点にするように気を付けてください。
ここで大事なのは、この練習の目的は、1ポイント押しの撞点でどれだけ他の距離にコントロールするのかではなく、撞点が同じでも力加減をどのように変えると手球の挙動にどんな影響が出るのかという感覚を培うことです。
なので、いろいろ力加減を変化させていく中で、「あー、強くなると結構前に出ちゃうんだな」とか、「意外と力加減をミスっても手球の走る距離は変わらないな」とか、「弱く撞いてもそんなに走る距離が短くならないぞ」とか、とにかくいろいろなことが発見できるととても良いです。
そういう感覚を研ぎ澄ませておくと、純粋にミスしてしまった後の分析力が上がりますし、コンディションが違うとき(他のお店や雨の時など)に基準の修正がしやすくなったり、プレッシャーのかかる場面で安全なショットを選択しやすくなったりします。
できれば、基準ができているショットすべてについて、力加減が変わるとどんな感じになるのかという感覚を調べられると良いと思います。
フリがある球の押し引きを見る
ここまでは全厚の配置における押し引きのコントロールを見てきたので、今度はフリのある配置での押し引きのコントロールについて見ていきましょう。
と言っても、フリの種類は正に無限に存在するので、特定のフリについての挙動を覚えるというのではなく、覚えたい球の性質を決めてその性質の球を習得するという方法が良いと思います。
また、初級者のうちは、イレの堅そうな比較的簡単な配置で練習することをおすすめします。難しいシュート配置はそれはそれでもちろん練習になるのですが、シュートそのものに意識が向いてしまって、ダシの方まで気が回りにくくなります。練習するポイント(今回はダシの挙動)に集中出来るような配置が良いです。
ここでは、
- 素直なラインになるような球
- 鋭くしっかり押し引きが出るような球
- 割れることを利用するような球
の3つに絞って習得を目指していきます。
素直なラインになるような球
まずは素直なラインになるような球を習得してみましょう。
下のように配置します。

図の左の短クッションからは手球も的球どちらも1ポイント、上の長クッションから手球は2.5ポイント、的球は1ポイントです。
このときの90°分離ラインは下の通りです。

まずは押し球です。
素直なラインを意識すると、大体薄い赤線のラインが最大目安でしょう。手前のサイドポケットにスクラッチするラインです。
なので、90°分離ラインまでの赤い線のクッションはすべて加減次第で調整して入れることができます。

ここでは精度は求めないので、自分の押し加減の感覚と手球のラインの感じが何となく関連付けられるくらいまでを目標にします。
色々と加減を変化させて、自分の中で押し具合の感覚をつかみましょう。
次は引き球です。
同様に素直なラインを意識すると、薄い青線のラインが最大目安でしょう。右上のコーナーポケットにスクラッチするラインです。
同じように、90°分離ラインまでの青い線のクッションは、加減次第で調整して入れられます。

これも押し球と同じように精度はあまり求めません。引き加減の感覚と手球のラインの感じを関連付けできればOK。
ただ、この配置例だと押し球より広くラインが変化するので、それを体感してみましょう。
鋭くしっかり押し引きが出るような球
ここでは、割れないようにしつつ押し引きのカーブをしっかり出して、鋭いライン取りをすることができる球の習得を目指します。いわゆる「キレる球」です。
技術的には難しい分類に入ると思うので、初級者向けのこのコンテンツでは、完璧に習得するというよりはどんな感じなのかをなんとなく感じておくというのが目標です。
なのでショット的に成功率が低くても、自分の中に「こういう球だ」という感覚のようなものができれば一旦OKです。むしろムキになって絶対習得するんだっていうのは今のうちはやめておいた方が無難です。
それでも中級者以降では非常に重要なショットでもあるので、初級者のうちに雰囲気は知っておいた方が良いと思ったのでここに入れています。
前置きが長くなりましたが、ここから内容に入っていきます。
まずは押し球から見ていきます。
下の図のように配置します。

図の左の長クッションからは手球も的球どちらも1ポイント、下の短クッションから手球は2ポイント、的球は4ポイントです。
このショットの90°分離ラインは下の図のようになります。

ここで、撞点はかなり上で鋭く押します。パワーではなく、回転量を出来るだけ増すように意識するとうまくいきやすいです。また、手球が割れないように、キューレベルを出来るだけ水平に近づけて手球が微小にジャンプしないようにします。
上手く鋭く押せたときの参考例を下図に示します。

現時点の技術力も勘案すると、とにかく上の短クッションに入れることができれば十分なキレだと思います。
この練習を通じて、鋭い押しをかけるにはどのようなタッチ、撞点、力加減で撞けばいけそうかというイメージを自分の中に作ります。イメージ作りを優先させていいので、成功率やコントロールは今はそこまで求めなくても大丈夫です。ただし、イレは最優先事項なので、タッチなどに気が行き過ぎてシュート率が下がるようなショットはあまり良い選択ではありません。
次は、引き球です。
押し球のときの配置から、的球はそのままで、手球を0.5ポイント的球に近づけます。

90°分離ラインは押し球と変わらず下の図のままです。

引き球でも一番意識することは手球の回転量をいかにして大きくするかということです。パワーではありません。
引き球でも手球が微小にジャンプしないように気を付けますが、キューレベルに関しては押し球ほど水平を強く意識しなくても大丈夫だと思います。むしろ、人によってはキューレベルを少しつけるように意識したほうが回転数を上げやすい場合もあります。どちらかというと、タッチを気にしたほうが跳ねにくいです。
キューレベルがついているにしても水平にしても、なるべく手球が浮き上がらない方向にキューからの力が加わるように気を付けたいです。下に向かっても手球は台とぶつかって跳ねますし、すくうような形になっても上に直接飛びやすいので、なるべく台と水平に手球に力が加わるイメージでストロークできると、鋭い挙動が得られやすく感じます。
鋭く引けたときの参考例を下の図に示します。

引き球に関しても、現時点の技術力では、とにかく下の短クッションに入るかスクラッチできるくらいに引ければとりあえずは十分なキレだと思います。
引き球では手球と的球の距離でかなりイメージが変わってきます。今回の練習例の配置では手球と的球の距離は近すぎず遠すぎずの近め、という引きやすいイメージの配置になってます。余裕がありそうなら、手球と的球の距離をいろいろ変えてみると、より良い練習になると思います。
とにかく、押し球と同じように、この練習を通じて鋭い引きをかけるにはどのようなタッチ、撞点、力加減で撞けばいけそうかというイメージを自分の中に作ります。引き球は距離感に左右されやすく、繊細なショットなので、イメージもより繊細に作った方が良いと思います。ダシの精度や再現率はさほど気にする必要はありませんが、イレは最優先事項です。
割れることを利用するような球
ここでは、いわゆる「割れる球」を用いてポジションをするような球を練習していきます。
まずは、スパッと撞く土台の練習をします。すでにできそうなら飛ばしてください。
センターショットのストップショットを撞くのですが、撞点は真ん中から半タップ下で限定します。
力加減とストロークによるタッチを調節して、ビタ止まりのストップショットができるような加減を探します。

このイメージが今回練習する押し引きの球のタッチ感の1つの基準です(この章ではこのタッチ感を「しっかりショット」と呼ぶことにします)。ここから撞点に少し変化を付けて、押し引きの球にしていきます。
まずは押し球から見ていきます。
下の図のように配置します。

図の左の長クッションからは手球も的球どちらも1ポイント、下の短クッションから手球は2ポイント、的球は4ポイントです。
これを撞点真ん中より1タップ上で「しっかりショット」で撞いていきます。

台のコンディションによって大きく変わってくるので大体ではありますが、うまく撞ければ上図のピンク矢印のような挙動になります(黒破線は90°分離ライン)。
今回は撞点真ん中より1タップ上で見ましたが、余裕がありそうなら撞点を少しずつ変えて、そのときの「しっかりショット」の手球の挙動をいろいろ観察してみてください。
同様に、引き球も見ていきます。
下の図のように配置します。

図の左の長クッションからは手球も的球どちらも1ポイント、上の短クッションから手球は4ポイント、的球は2ポイントです。
イレを簡単にするのとスクラッチ回避の都合上、押し球のときと配置を大きく変えています。
これを撞点真ん中より1.5タップ下で「しっかりショット」で撞いていきます。
これも台のコンディションによって大きく変わってくるので大体ではありますが、下図の青矢印のような挙動になります(黒破線は90°分離ライン)。

引き球も押し球のときと同様、少しずつ撞点を変えて、いろいろ試してみてください。
この「しっかりショット」での押し引きの感じがつかめると、押し引きの範囲の中でも手球のダシ軌道のバリエーションを大きく広げることができます。邪魔な他の球を回避したり、当てにいってトラブルを崩しに行ったり、安全なラインでダすようにしたりと、いろいろなシーンでとても有用です。