スロウを知る
スロウは初級者にとって難関の一つです。スロウについて知らずにいると、シュートミスの原因の一つがいつまでも解決せず、厚みはあっているはずなのになぜ的球が外れるのか、という疑問がいつまでも解消しないことに繋がります。
スロウとは何か?
スロウとは手球と的球との間の摩擦によって、的球の進行方向が影響を受ける現象のことです。
スロウには大きく分けて2種類あります。
- 手球と的球の衝突によって生じるスロウ(Collision-induced throw, Cut-induced throw)
- 手球のひねりによって生じるスロウ(Spin-induced throw)
このうち、2に関しては、ひねりについての理解がないと説明できないので、詳しい話は中級者の藪の該当ページにて行っています。
このページでは1の手球と的球の衝突によって生じるスロウに関して紹介していきます。
衝突によって生じるスロウ
まずは、手球と的球の衝突によって生じるスロウを物理的に考えてみます。

上図のような配置で的球は図の真上方向に狙っているとします。
イメージボール通りに衝突したとき、的球にかかる力を黄色矢印、手球にかかる力を青矢印で示しています(力の大きさはわかりやすさのために大袈裟にしてます。)。
手球と的球の間の摩擦によって、手球の進行方向に的球が引っ張られるような力が加わり、的球は赤矢印の方向へと進みます。つまり、真上方向に狙って、理想的なイメージボールの位置に手球がヒットしても、的球は真上方向には進まないことになります。
このように、フリがある球では、必ず手球の進行方向に引っ張られるように的球は進みます。
言い換えれば、イメージボール通りに手球があたると、必ず少し厚く当たったかのように的球は進むことになります。
これが、手球と的球の衝突によって生じるスロウの影響です。
衝突によるスロウを体感する
衝突によるスロウについて、頭で理論的にはわかってもどうも納得できない、という方もいると思います。
そこで、衝突によるスロウを実際に体感することができる方法を紹介します。

上の図のように的球を配置します。
手球は右の短クッションから1.5ポイント、下の長クッションから0.5ポイント付近です。
入れる的球(上図では1ボール)を右の短クッションと下の長クッションからそれぞれ2ポイントのところに置き、その的球に接触した状態でもう一つ的球(上図では2ボール)を置きます。このとき、二つの的球の中心を結んだ線の延長線上に左上のコーナーポケットの中心が来るように正確にセットします。つまり、入れる的球のイメージボールの位置にもう一つの的球を置くということになります。
この状態で、手球をイメージボールの位置においた的球(上図の2ボール)に全厚で軽く当てます。
もしもスロウがなければ、入れたい的球(上図の1ボール)は左上のポケットに中心から入るはずです。しかし、実際には衝突によって生じるスロウがあるので、下図の赤矢印のように厚く外れるはずです。

どうでしょうか。思ったよりもスロウの影響が出ていて驚いたかもしれません。
このスロウ影響を知らないと、実際には理想的なイメージボールに手球を運べていたとしても、厚みを間違ってしまったと錯覚してしまうでしょう。でもそれは、厚み通りに撞けなかったのはなく、そもそも狙う厚みが間違っていたということがあるのです。スロウがあるために、フリがある球はいつも少し薄めに狙わなくてはいけないのです。
「いやいや実際のプレーでは入れたい的球に直接当てるのだから、ここまで外れないはずだ」と思うかもしれませんね。
確かに実際のプレーでは同じ強さで撞いたのなら、ここまではスロウが出ません。何故なら上の実験よりも手球が的球に速く当たっているからです。イメージボールの位置に置いた的球(上の実験の2ボール)は停止している状態から入れたい的球に当たっているので、スロウの影響がかなり大きく出るようになっています。実際のプレーでは手球がより速く当たるので、上の実験よりも少しスロウの影響は減ります。しかし、これは減るだけであって、スロウがなくなるわけではありません。つまり、実際のプレーでも確実にスロウの影響は出ています。
スロウの影響の大小
スロウの影響の大小に関係する要素はおおまかに以下の4つです。
- 手球の速度
- フリ
- 球の汚れ具合
- 的球とポケットの距離
厳密に言えば他にもあるかもしれませんが、プレーでスロウの影響について考えるべきものは上の4つで十分だと思います。
手球の速度
手球の速度が大きいほど衝突によって生じるスロウは小さくなり、速度が小さいほどスロウは大きくなります。
つまり、ハードショットの方がスロウが小さくイメージボールが素直になり、弱いショットではスロウが大きくなり、見越しを多くとる必要があります。
フリ
まず、厚み100%の球、即ち、全厚の球では衝突によって生じるスロウはありません。
逆に全厚以外の球では、すべての球に衝突によって生じるスロウがあります。
スロウによる的球進路のズレの大きさの絶対値で言えば、厚み1/2~1/3程度が最も大きくなると言われていますが、プレーにおいて最も影響が出るのは薄い球です。
薄い球ではポケットの余裕によるシュートが成功できる誤差が小さくなるので、スロウの僅かな影響がシュートの成功率に大きく影響してくるからです。
球の汚れ具合
同じ球のセットでプレーを続けていると、チョークの転写などの影響で球が汚れてきます。
球が汚れてくると、手球と的球の間の摩擦が大きくなるので、衝突によって生じるスロウも大きくなります。
逆に、汚れていないワックスの良くかかった球では、衝突によって生じるスロウはごくわずかになります。
また、球が汚れてくるとスキッドも起きやすくなります。
スキッドとは手球と的球の接触点にチョークなどの汚れが偶然重なり、途轍もないスロウが発生することです。
スキッドが発生すると、ゴツっという大きな音がして、多くの場合かなり厚く外れます。
スキッドの発生は完全に運頼みなので、なるべく球がきれいな状態を保つことが重要になります。
的球とポケットの距離
これに関しては衝突によって生じるスロウが直接大きくなったり小さくなったりするわけではありませんが、的球とポケットの距離が離れていると、わずかなズレがシュートミスにつながりやすくなるため、スロウの影響が大きくなると言えます。
そのため、的球とポケットの距離が遠い場合には、弱いショットはかなり難しくなると言えます。